文明前線北上中
まだ7月だというのに,あまりに暑すぎる.
毎年同じことを言っているような気もするし,去年はこんなに暑くなかったような気もする.喉元過ぎれば何とやら,ということらしい.
この際,去年と比べた相対的暑さはどうでもいい.ただ絶対的に暑くて耐えられない.普段はテレワークで冷房ガンガンの部屋に引きこもり,あまりにも高い電気代に仰天し,そして久しぶりの出社で朝早くに家を出た刹那に汗が噴き出した瞬間,この東京は絶対的に人の住む状況にない,そう確信した.
都合の良いことに眼の前に転がっているのは週末の4連休.連休の航空券高騰も何のその,目指すはあいも変わらず北海道にある実家.一路北へ,暑さからの逃避行.
「当機は現在,山形県上空,高度37,000ftを順調に飛行しています.先程入った情報によりますと,到着地札幌,新千歳空港の天候は雨.気温は摂氏21℃との情報が入っています.」
キャリーケースを転がして息も絶え絶えでたどり着いた羽田から飛び立った機内でそんな放送を耳にして.さっきまでいた東京は午前中で既に35℃近く.雨で日が差さないバフがあるとはいえ,1時間ちょっとのフライトで気温差は15℃にもなるらしい.避暑地としてはなかなか優秀だ.
優秀だ,と思ったのだが,それは雨の日だけの話だったようだ.翌日からは晴れ間が覗き,暑さに苛まれる日が続いた.どうもここ最近の北海道の天気もおかしい.10年前の北海道より明らかに暑い.
正確に言うと,暑いのは10年前も暑かった.ただし10年前の北海道の夏は,朝晩が涼しく,そして昼間は暑いものの湿度は高くない.そんな清々しい暑さだった.しかしどういうわけか,2023年の北海道は朝晩の涼しさこそ変わらないものの,梅雨のごとく嫌らしい長雨が続き,そして昼間は暑さに加えて湿度に苛まれる,そんな気候になっていた.
10年で梅雨前線と熱気は北上し続けて,北海道に肉薄するところまでやってきてしまったらしい.
それと歩調を合わせるように文明開化の前線も北上して,ついに小中学校にエアコンがついたらしい.
10年前は当然のようにエアコンはなかった.今よりは不快指数の低い気候だったとは言え,それでもどうやってあの夏を耐え抜いていたのか,今となってはわからない.一度文明レベルが上がってしまった今,あの頃の暮らしは思い出せもせず,耐えられもせず.人間ってそういうものだ.
ところが詰めの甘いことに,小中学校は文明レベルが上がったにも関わらず,高校にはその前線はたどり着かず,未だにエアコンがないらしい.小中9年間のぬるま湯の夏を終えたと思えば蒸し暑い高校に3年間詰め込まれる,これは中々につらかろう.
文明前線,北上中なるもあと一息勢い足らず.