超悲観的フェルミ推定 | My Favorite Things
朝起きた時は，今はまだ夜だからもう少し寝てろって自分に言い聞かせた．夜になって眠くなった時は，まだ夕方だから眠いはずないって自分に言い聞かせた．それでも自分の身体は言うことを聞いてくれなくて，朝には目が覚めて，夜の羽田空港で欠伸を噛み殺している．気持ちはもうトルコ時間なのだが，身体はまだまだ日本時間だ．
ゴールデンウィークにトルコに行った．2月初旬キューバ・メキシコ，3月香港．完全に海外旅行熱に火が着いた私を止められるものは，貯金残高ぐらいしかない．そして貯金残高はもう少し溶かしても何とかなるようだ．よってもうブレーキが効かなくなってしまった自分は，4月中旬になってゴールデンウィークのトルコ行きを決定した．
目減りしていく貯金残高にため息をつきつつ，全部コロナが悪いってことにする．あれだ，子供の頃ゲームを禁止されたら反動でハードなゲーマーとして育ってしまう，みたいなやつあるじゃん．それと同じだ．「就職して金銭的に余裕できたし，さあ海外だ！」ってところで数年間国境封鎖された鬱憤の代償は高くつく．
基本，自分は逆張りなので．正月に実家に帰らず，翌週の成人式の連休で実家に帰る．お盆もシルバーウィークも有休は使わない．全然なんてことない平日に休む．そういうムーブを好むし，実際そうしてきた．
「みんな」と同じことをしたくない，みたいな捻くれた承認欲求みたいなものもあるし，後はシンプルに連休は「みんな」出かけるのでどこも混んでいるし，ウンザリしてしまう．必然，ゴールデンウィークとかいう連休も，カレンダー通りに連休は享受するものの，谷間の平日に休んで空前の10連休！みたいな休み方は全部スルーしてきた．でも今年は10連休にした．決めたのは4月中旬．状況的に休めそうだったから，っていうのもある．そしてそれ以上に，自分に残された時間を意識したからでもある．
弊社は好きな時に夏休みを取れる．だいたい，月曜から金曜を休みにして9連休にするのがトレンドである．任意のタイミングに取れる9連休は実に海外旅行に丁度良い．2月のキューバ旅行もその休みを使っている．
今年自分は30歳になる．日本人男性の平均寿命は80歳とからしい．碌な生活をしていないので自分はもう少し早く死ぬ予定である．多分，70歳とかだろう．そしてやはり碌な生活をしていないので，晩年の10年は足腰も弱り病気もする予定である．呑気に海外旅行なんてやれるのは60歳までという心づもりである．
ということは，正月もゴールデンウィークも放り投げる逆張りクソ野郎に残された長期休暇は，せいぜいあと30回しかない．ということに今気づいた．
超悲観的なフェルミ推定の結果分かったのは，シンプルに残されたチャンスがあまりにも少ないという事実．この世には200弱の国がある．私は全部行きたい．そこに国があるなら．1回の旅行で平均7カ国弱を巡る必要がある．いや無理でしょ．
ゴールデンウィークに東京にへばりつく逆張りムーブでニチャついている場合ではない．海外に行け，行かねば．全部の国訪問を達成できるかは置いておいて，それでも「今のペースだと，あと30回しか長期海外旅行はできない」という事実は，あまりにも重かった．
そういうわけで日本人がワラワラの飛行機に詰め込まれて遠くトルコを目指す．ツアー客もいるらしい．ガイドがツアー参加者の様子を見ながら通路を行ったり来たりしている．鬱陶しいので座っていてほしい．こういうのがあるからゴールデンウィークは嫌なのだ．
でも仕方ない．今後はゴールデンウィークもシルバーウィークも正月も日本にはいない，そういう心づもりで生きていく．連休に大混雑の空港でインタビューを受ける人を鼻で笑っていた自分が懐かしい．「御社は自由に連休取れないからこんなクソ混んでる時に旅行しないといけないなんて大変どすなあ」とか言っていた自分を殴り殺したい．違う，そうじゃないんだよ．やりたいことに対して，残されたチャンスがあまりにも少ないのだ．頼むから早く気づいてくれ，当時の自分．
こうして人は大人になって，ゴールデンウィークに旅行をする．満員の飛行機に揺られてダウンロードしておいたAmazonPrimeのアニメを見る．そう言えば最近，アニメも見なくなった．何故か？「1週間前に見たエピソードの内容を覚えていられない」からだ．だから放送終了してからまとめてでなければアニメを見ることができない．そして，大人はこういう旅行の時くらいにしかアニメを見なくなる．
大人になんて，なりたくなかったな．
