路線バス紀行番組、地震速報、あるいは殺人事件。
2023年12月,青森県への旅行をもって,日本全国47都道府県すべてに少なくとも一度訪れたことになる.
元々学生の頃からお金を貯めてガツンと一発海外に行くというよりは,国内を青春18きっぷとLCCを駆使して貧乏旅するスタイルだったこともあり,気づけば結構な都道府県の訪問歴が積み上がっていた.「就職したら海外旅行行くぞ」と思っていたのに,そこにコロナ禍が来て,海外に行けずに溜まった鬱憤と残業のし過ぎで貯まった貯金をぶつける先になったのが国内旅行だった.
コロナ禍という非日常もありつつ,北は北海道から南は沖縄まで,結構めちゃくちゃなプランで飛び回ることができた.コロナ禍が落ち着きつつも入国制限があった頃,思えば一番国内旅行をしやすい時期だった.昔から憧れていた「本当に何も予定を決めずに旅に出る」ということを実現できたのもこの時が始めてだった.たまたま取れた寝台特急を起点に西日本を放浪なんて,もうこの先することができるのか,分からない.
全県制覇が見えた頃から,「行きたいところ」よりも「行ったことのない県」を塗りにいくことに重きを置き始め,故に旅行の計画には大いに苦しむことになった.「行く都道府県」だけは決まっている.問題はその都道府県で「行きたいところ」がない.でも「行く」ことだけは決まっている.なんだこれって感じ.
「特に行きたいと思っていないところへの旅」は,もっとつまらないものになる覚悟をしていたけれど,毎回どこかしらで意外な興味を惹かれるものに遭遇することができた.
そうして未踏の県の点と点をつなぎつつに遭遇する意外な魅力は,往々にしてガイドやブログにはないものだったり,何なら名前も聞いたことのない町で見つけることが多かった.考えてみればそりゃそうだ,って.自分は大概ひねくれ者だもの.ベタベタの観光地を楽しめるようなタイプじゃないよね.
こうやって全国を旅してよかったと思うのは,そういう名前も聞いたことのない――あるいはローカル路線バスがテーマの紀行番組や,地震速報や,殺人事件のニュースでしか触れることのない――町の意外な魅力に触れられたことなのは間違いない.
全県制覇が現実味を帯びてきた頃,「全県制覇しちゃったらどこに行けばいいんだろう」と思ったこともあるけど,考えてみればなんてことはない.「全市区町村制覇」するくらいのことをしなければ,まだまだ国内でも旅を楽しめる.そんな気がする.