Tram | My Favorite Things
「トラムが走っている街にハズレはない」というのが日本各地を旅して得た一つの定理だ.そしてここイスタンブールにもトラムが走っている.よってイスタンブールは大当たりだ.
トラムの何が良いか.まず,かわいい.街の中をトコトコと走っていく感じが良い.併用軌道のトラムはより良い.何と言うか,肩身が狭そうに走るのが良い.専用軌道を堂々と走っている姿も悪くはないが,併用軌道を走る姿のほうが萌える.
後は,手が届くところを走っているのが良い.普通の電車だと外からは隔離されてるし,地下鉄は言わずもがな地下を走る.一方トラムは「その辺」を走っている.生活エリアに普通に「いる」のが良い.その,手の届く感.よく「普通にクラスにいそうな感じのアイドル」が人気が出たりするって言うじゃん,知らんけど.それに近い.会いに行けるトラム.
写真趣味的には「街の中を走っている」というその事実自体が大きな意味を持つ.自分が一番最も好む撮影スタイルである街歩きとの相性が良い.なんてことのない風景のワンポイントにトラムがいると,それだけで写真が完成する気がする.
それに,どこに行くのかが分かりやすいのも良い.何を言ってんだという話ではあるけど,知らない街のバスは難しい.まずバス停が難しくて,同じバス停の名前でも交差点の周囲に何箇所も乗り場があったりする.どこから乗ればいいのかわからない.その点トラムは線路しか走らないので,線路を辿れば間違いなく停留所を見つけられるのが良い.当然行き先もまた線路の先にあるという確信を持てるのも良い.バスだとそうは行かない.バスは常に,どこに連れて行かれるのかわからない恐怖みたいなものがある.あいつら,道路さえあればどこへでも行けるからな.まったくクレイジーな乗り物としか言いようがない.
後はやっぱり,トラムって必ずしもどこでも主流の交通機関ではないけど,そのトラムがある街というのは,それだけ活気がある.街を行き交う人が多いので,それだけ見どころがある街であることが多い.
イスタンブール旧市街を走るトラムは今までにない刺激的なトラムだった.一言で言えばカオス.乗降中の人がいても容赦なくドアを閉めてくる.トラム専用っぽい空間を原付が走る.とんでもないカオス空間だ.
新市街を走るトラムはノスタルジックな車両が走る落ち着いた空間……と言いたいところだが,「手の届く感」を「感」ではなく完全に実践した乗客がいて,普通に箱乗りしている乗客がいる,そんなトラムだった.
良い.やっぱりトラムは良いねえ.このカオスさがいいんだよな.