太陽はまだ沈まない | The Express Train Heads North.
ロンドンに降り立ったその足でヨークへ北上し1泊.そして翌日,LNERに揺られて更に北上して辿り着いたのは,スコットランド・エディンバラ.いつか行ってみたいと思っていた街であり,でも遠いから行くことはなく終わってしまうんだろうなと思っていた街でもある.旅の計画を立てた時,スコットランドまで回ると移動距離が長すぎるし,もう少し腰を据えてロンドンやその近郊を観光する計画のほうが良いんじゃないか,とかなり迷った.迷いすぎてホテルの予約がなかなかできなかったくらいだ.何ならロンドンから北へ向かう時になってもまだ,本当に良かったのかな,と思っていたまである.
抱えていた疑念はEdinburgh Waverley駅に降り立った瞬間吹っ飛んだ.見よ,この美しい駅を.欧州のモダンな駅に来たな,って感じだ.日本には……というか少なくとも関東にはこういう雰囲気の駅は無いと思う.国内だと大阪とか京都が若干近い雰囲気だけど,やはりこの雰囲気の本場はヨーロッパだと思う.
ヨークに着いたときもしばらく駅をウロウロして写真を撮っていたが,エディンバラでも全く同じムーブを決めてしまった.
駅を心ゆくまでしばらく徘徊して,さっさとスーツケースをホテルに預けに行ったほうが良いという当たり前すぎる事実に今更気づく.駅の雰囲気の良さに若干我を忘れてしまっているまである.我に返って駅を出たが,目に付くものがすべてを撮りたい衝動に駆られてしまう.
色々撮って歩いた.気づいたらゴミ箱まで撮っていた.全然我に返ってないじゃん.
ようやくたどり着いたホテルで荷物を預け,いつもの如くカメラをぶら下げてひたすら街を歩く.これは国内旅行と同じスタイルだ.海外旅行くらい,王道の観光スポット回ろうと思って,有名どころの博物館だの教会だのに行ってみたこともあるのだけど,結局国内でも海外でもその手の観光スポットには興味を持てないらしいということに気づいた.
どうやら自分が興味を持っているのは,街並みそのものらしい.なので,特にアテもなく街を歩く.エディンバラと言えば?多分,一番旅行で行くべきなのはエディンバラ城だろう.でも結局エディンバラ城には行かなかった.時間に余裕があれば行こうかなとは思っていた.でもエディンバラはそんな時間の余裕を産まないほどに,ひたすら歩くだけで楽しめる街だった.被写体が多すぎる.
そんなエディンバラで一番参ったのは,全然太陽が沈まないってことだな.訪れた季節は夏.ロンドンは北海道よりも北にある.そしてそこから2日かけて北上したエディンバラは,日本近辺で言えば樺太の北端の緯度よりも北にある.
日没は驚きの21時半.やりすぎだろ.もう少しいくと白夜に片足突っ込むくらいである.散歩してればそのうち夜のエディンバラを撮れるかな,っていう目論見だった.あれ,夕方になったのに全然日が傾かないな,と思ったその違和感に気づいたのは,足が棒になるんじゃないかってくらい何時間も街を歩き通した後だった.
さすがにここまで来て暮れなずむエディンバラを見ずに終われるか,ってことで気合いで歩き続けたが,歩きすぎと時差ボケであり得ないバテかたをしたため,薄暗くなったところで無念のリタイア.まあ今回はこのくらいで勘弁してやろう.命拾いしたな.
なかなか日が沈まないっていうのも写真趣味的には考えものだ.