#36 生活水準低空飛行中 | 根暗草子

4年ほど使っていたXiaomi Mi Band5がついに壊れた.壊れたというのは起動しなくなったとかではなく,物理的に壊れた.液晶モニタを留めていた爪が壊れてしまったのか,朝起きたら液晶がぶらりぶらりと剥がれ落ちかけていた.Amazonの購買履歴を見ると1年に1回くらい交換ベルトの買い替えはしていて,劣化するベルトを入れ替えながら長い事使い込んできたのだが,ついにお陀仏となってしまった.
ちなみにその前に使っていたXiaomi Mi Band2も同じく4年くらい使っていたらしい.睡眠トラッキングもするので,外に出かけるときと寝る時は常に身につけていたことを考えれば,よくここまでもってくれたなと思う.どうぞ安らかに.
そういうわけで久しぶりにスマートバンドをつけずに外出してみたのだが,右手首が落ち着かない.いつもそこにあったものが無い.ふとした瞬間に何か忘れ物したんじゃないかと不安になるような,そんな感じ.
ちなみに右利きにも関わらずスマートバンドを右手首につけるのは,理由もなく腕時計とスマートバンドを併用していた時代の名残.その頃は左手首に腕時計を,右手首にスマートバンドをつけていた.2つ着けていた意味は,それこそ「腕時計を着けていないと落ち着かなかったから」だったと思う.高校入学の時に買ってもらった腕時計をずっと着けていて,それをスマートバンドに変えたら,なんか重さが足りなかった.それが物足りなくてしばらく両方を使っていた.今回の落ち着かなさも,腕時計を外してみた時のあの頃の感覚に近い気がする.
スマートバンドって,無いと困るのかと言われると特に困らなかったりする.睡眠トラッキングとか別に結果を見ているわけではないし,目覚まし機能もあるがバンドの振動で起きることができた試しがない.強いて言うなら歩数計としての機能はよく使っている.お,今日1万歩も歩いたじゃーん,みたいな.でもだからって,それも別になくて困るのかと言われると……?非常に怪しいし,そもそもスマホでも歩数は測れたような気がする.
冷静に考えると,要らない……ってコト?なのかもしれないが,右手首からの喪失感があまりに大きい.常に何か忘れ物をしたんじゃないかと思いながら出歩く気分になり,とてもつらい.「着けていることそれ自体に意味がある」という状態になってしまっている.
ならば買おう,バンドを.と言いたいところだが,こういう「モノが壊れた時」というのは新しいガジェットに手を出すチャンスとも言える.AppleWatchを買うチャンスなんじゃないか?今まで新型のAppleWatchが出るたびに,少し興味はあったのだが,でもまだこのバンド使えるしね……と購入見送りに見送りを続けてきたガジェットだ.日常では特に便利に思うことはあまりないかもしれないけど,海外旅行に行く機会が増えてきて,スマホを取り出さずともApplePayで支払いができるのも便利そうだなと思っていた.
AppleWatchもピンキリだが,安いのは3万強,普通のは6万弱.その上に何とかウルトラとかいうバカ高いやつがあるが,これはハナから選択肢に入っていない.
3万か6万.まあ払おうと思えば払える金額だ.じゃ,ぽちっとな,と買い物かごに突っ込むところまでは良かった.ただ,購入ボタンを押そうとすると「これ,何年おきに買い替えることになるんだ?」ということが気になってくる.
Mi Bandは4年使った.おそらくだがAppleWatchはバッテリーの都合でもう少し事実上の寿命は短くなるんじゃないかと思う.毎日充電することになると思うしね.2年か3年に1回とか,そういう感じになるんじゃなかろうか.
齢30.そんなに長生きしたいわけでもないが残り60年とかは生きることになるかもしれない.2年に1回AppleWatchを買い替えたらあと30回AppleWatchを買うことになる.つまりこの「購入する」ボタンは将来に渡る100万弱の買い物のトリガーになっているとも言えるんじゃないか?そう思ったら,購入ボタンは押せなかった.
どうしてもこう,買い物を単発ではなく将来に渡って連続するものとして評価してしまう癖が抜けない.1回引き上げた生活水準や便利さは,なかなかそれを手放すことができない.AppleWatchもそうだ.「海外旅行に行く機会減ったから,なくても良くなった」としても「手首がさみしいから」と言って買うことになる,それが人間というものだもの.
そんな未来を勝手に見通してしまったので,今回も数千円のスマートバンドを購入した.万事こんな感じなので,生活水準は大学入学した時から一向に上がらない.あの時に買った安物の電子レンジ,冷蔵庫,洗濯機を未だに使い続けている.一度ドラム式洗濯乾燥機なんて買ってみろ,一生ドラム式を買う羽目になるんだぞ,と思ってしまう.
そんな感じで生活水準は低空飛行を続けていて,でもそれは文化的な生活というやつが18歳の頃から全然より良くなっていっていない,ということでもあって.社会は勝手に進歩を続けていくのだから,相対的に自分は取り残されて,これまで以上の低空飛行を続けていくことになってしまうんだろうなあ.