Bluelight Sonata

2025-08-15

#34 ぼっち癖で迷惑をかけた | 根暗草子

根暗草子 / camera α7CR / lens Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA/SEL55F18Z / location Aichi
The Endoji shopping street, Nagoya, Aichi.

約2年半ぶりに名古屋に来た.名古屋とは因縁の地である.就職したとき配属が「東京」or「大阪」or「名古屋」で,東京か大阪なら良いけど,名古屋だけは絶対嫌だ!と大騒ぎした街.謂わばスリザリン,それが名古屋だ.

今思うと何故あんなに名古屋を嫌がったのか.その理由は覚えていない.でも多分理由の1つにあったのは「名古屋何も無い」と思っているところにあると思う.


その「何も無い」名古屋に2年半ぶりに来た理由だが,愛知出身の同期の結婚式である.

「結婚式呼んだら来てくれる?」みたいな聞き方をされたと思う.同期ということもあり,自分の日頃の捻くれ具合を知っているが故の聞き方だと思う.だいたい何事にも斜に構えている,それも同時に複数のものに対して.「正面」の無い時空が歪んでいるのかってくらいの捻くれっぷりである.「そもそも結婚式というのは……」みたいな理由の分からない蘊蓄を垂れ流した挙げ句,欠席のご回答をするんじゃないか,くらいに思われているに違いない.何事も日頃の行いである.

捻くれすぎて結婚式を祝えないのではないか?と思われているまである."CAN YOU CELEBRATE?"ってこういうときに歌うものなのかもしれない.「お前祝えるの?」という煽りソングだ.


ただその予想とは対照的に,自分は結婚式というもの自体は素直に喜ばしい素敵なイベントだと思っている."I CAN CELEBRATE!!"だ.そういうアンサーソングがあるかもしれない.

失礼クリエイターの提唱するマナーがキツいっすみたいなところはあるが,だがそれも結婚式というものを汚れのない美しく清らかなものにするためのものと思えば,ある程度は必要なものなのかもしれない.それ故,世の中の何とかマナーみたいなやつは足蹴にしても良いと思っている自分も,結婚式のマナーは割とちゃんと守っている.「3万円って2で割れますよね,ご祝儀は30,011円にすべきなのでは?」みたいなことは言ってはいけない.

数は多くないがこれまで結婚式に参列して,なるほど結婚式というものは素晴らしいなと本当に思っている.人と人の人生が結ばれ,これからを迎えるに当たってこれまでを感動的に振り返るストーリーテリング.本当に全く美しいイベントと言える.

「自分が無縁なだけになおさらそう思うのでしょうね」,と最後にぼやくくらいが,申し訳程度の捻くれ要素だ.


んでまあ,喜んで参列させていただく次第と相成ったのだが,ちょっとしてその同期から「○○さんと面識あったっけ?」みたいなことを聞かれた.この○○さんというのも同期なのだが,自分は直接の面識は無い.「じゃあ××さんは?」これは結婚する同期の上司であるが,以前同じ部門だったがこちらも面識はあるが,しっかり話したことはない.

やけに人間関係リサーチしてんな,どうした?と思ったら,結婚式の席次決めるにあたり「面識のある人間が足りているだろうか」という悲しすぎる配慮だった.会社関係の人間で島を作ったときに,知らない人ばかりにならないか,ということである.

部門の枠を超えて同期が結集したときに飲みに行こうぜ!という流れで颯爽と帰宅し,部門の飲み会にも顔を出さず,という私である.デフォルトを「交友を広げない/親睦を深めない」ほうに倒しているタイプだ.言うまでもなく,人間関係は極小だ.これまでそのスタイルでやってきて,別に影響のあるのは自分だけだし,その自分は困ってないし……ということで,誰にも迷惑をかけずにいたはずのぼっち癖が,ついに他人に迷惑をかけた.

ぼっち癖が,ただでさえ大変な結婚式の準備の席次決定問題の制約条件を一つ厳しくした.


結局,自分と仲の良い――この存在も非常にレアなのだが――同期も他に参列していたし,「これ以上"こいつと面識のある人を入れる"という制約条件を入れたら大変だから気にしなくて良い」と伝えたのだが,まさかぼっち癖が他人に迷惑かけるとはね,というのは人生31年目の新たな発見である.

席次で迷惑かけた分,式はしっかり素直に楽しんで祝福してきた.ご結婚おめでとうございます.