Bluelight Sonata

2025-04-13

#32 不確実性のない無限ループ | 根暗草子

根暗草子 / camera α7CR / lens Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA/SEL55F18Z / location Tokyo
Jiyu Gakuen Myonichikan

最近,不定期に「割と“みんな”見てるアニメ」が出てくるなあ,と思う.テレビを見ない人が増えて「国民的」なものが出づらくなった時期があったはずだが,一周回って「ネットでみんな見てる」ものが出るようになったのは,時代の移り変わりを感じる.そしてほんの十数年前は「アニメ見てる」なんて言おうものなら半ば日陰者みたいな扱いになっていたことを考えると,やはり時代は変わったなあと思うのだ.

体感的には,「まどマギ」「進撃の巨人」あたりで流れ変わったな,と思う.「まどマギ以前」は「アニメ見てる=オタク」みたいな扱いだったが.そのあたりからあっという間に市民権を得るようになった印象を持つ.


さて,そんな日陰者時代に週に何十本とアニメを見ていた自分だが,「割と“みんな”見てるアニメ」が出現した今,実はそれらをほとんど見ていない.最近だと,そう,「推しの子」.あれも実はまだ見てない.

だいたい2話あたりで「◯◯っていうアニメが面白いらしい,流行ってるらしい」となるだろう.そこでタイトルを認知する.だが,まだ見ない.6話とかで「覇権」が確定する.こいつは流行確定.“みんな”見てる.自分も見るか?まだ見ない.ついに最終回,グランドフィナーレ……と見せかけたCパートの特報,「第2期決定!」.

これにより,自分がしばらくこのアニメを見ないことが確定する.


どういうことか.つまり,自分は「完結に向かって着地することが確定している作品」を読み進めていくのが好きなのだ.これはかつて,読み始めたラノベがよく分からない打ち切り方をされたり,逆に刊行され続けて一生完結しなかったり――禁書目録,お前のことだぞ――,2期まで見たアニメの3期が一生来なかったり,小説投稿サイトで読み始めた作品が未完結のまま作者がエタったり.数多の煮え湯を飲まされ続け,喉は焼け,食道は爛れた成れの果てである.

完結していない作品にベットするリスク,というものを重く評価している.出版業界を知る人曰く,連載中に継続して購入されなければ打ち切りの憂き目に遭うらしい.すなわち私のようなムーブがむしろ作品を短命化させているのかもしれない.完結しない作品を増やしているのかもしれない.それでもただ,もう読み始めた,見始めたものが完結しないのが嫌で,ブームが過ぎて話題にもならなくなった頃に,完結した作品をひっそりと鑑賞する.そういう流儀だ.


そしてアニメというやつは難儀で.原作があるものだと,まず「原作が完結する」というハードルがあり,そして「そのアニメ化も原作最終巻まで完結する」という二重のハードルがある.まず前者でだいぶ篩にかけられ,そして後者でも脱落する.なので「見れる」アニメは極わずかだ.

結果として時間を持て余したときには,すでに完結して,そして何度か見たアニメや小説を再び見て,読んでいる.何度見ても,読んでも当然知っているオチに帰着する.当然だ.何度ハリー・ポッターシリーズを読んでも,間違っても我が君が支配する世界はやってこないのである.

不確実性のない,心地の良い世界へようこそ.こういう感じで,新鮮味を感じることも,意外性も感じることもなく,ただループを繰り返す懐古厨おじさんが生まれている.

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