Bluelight Sonata

2025-01-03

#29 賞味期限は3ヶ月で切れる | 根暗草子

Sichuan Rd.(M), Shanghai, China.

中国に行くにあたり必ずと言っていいほど言われるのが「現金は使わないのでQR決済アプリを必ず入れていけ」という言説だ.これは全く本当のことで,街中で現金を使っているシーンは全く見なかったし,念の為にキャッシングした人民元は2泊3日の滞在で1元も使うことがなかった.

中国で広く使われる決済アプリは2つ,AlipayとWeChatPay.両方入れておくのが安心だろう,とWeChatをインストールしようとしてAppStoreに移動して気づく.もうインストールされてるじゃん.そういえば,大学院――日本の大学なのだが,社会科学系修士に進む日本人が少なすぎて中国からの留学生がマジョリティだった――時代に,それこそWeChatPayの話題になってインストールしたことがあった.

ということはアカウントもある.早速ログインしてみようとするが,「長期間使ってないのでロックしました」的なメッセージが表示され,詰んだ.ググると曰く,友達登録している人に解除の依頼を飛ばして,それが受け付けられると解除されるそうな.なるほど.そういう仕組みもあるわけか.

問題は友達がいないという,あまりにも厳然とした事実である.


おかしいんだよなあ.不思議な状態としか言いようがなくないか?だって,大学院で中国人の同期は20人とかいたんだぞ.同期以外にも研究室の先輩・後輩を入れるともっと居た.それが修了から5年半経った今,連絡を取れるのは1人もいない.

しかしよく考えると,連絡が取れないのは中国人の同期・先輩・後輩だけでなくて,数少ない日本人の同期も連絡取れなかったわ.もっと言うと,学部の時の同期も最早連絡取れないし,更に言うと高校の同級生も取れない.

何が「おかしいんだよなあ」だ.何か摩訶不思議でおかしなSF的展開に巻き込まれて人間関係が途絶したわけでもなく,自分にとっては当たり前にいつも通りな状態だ.それがおかしいと言うなら,強いて言えば「おかしいのはお前そのものだろ」である.


別に「俺は大学院で孤立している,あえてね」をしていたわけでもない.当時はそれなりに挨拶し,それなりに雑談し,それなりにうまくやっていた.これは高校でも大学でも同じ.「友達いないからなあ」と言いつつ,その時々はその場を乗り切るだけの人間関係は成立させていて,ただしそれは「学校」とかそういうラベリングというか,コミュニティありきなんだよな.故にコミュニティが最早存続しない今,それは成立しない.

経験上,コミュニティベースの人間関係には3ヶ月の残り香がある.つまりだいたい3月末に「学校の同期」というラベルが剥がれて,6月くらいまでは稀に連絡を取ったりする.システム的に言えば「移行期間」というか「並行稼働」みたいなやつだな.だが,それもそこまでだ.コミュニティベースの人間関係は無メンテナンスだと3ヶ月で賞味期限が切れる.

ましてや5年半だからね.賞味期限が切れるどころか,冷蔵庫の中で腐っている.


そういうわけでWeChatのアカウントは救出できなかった.詰んだなあと思ったけど,どういう仕組みかわからないがアカウントを作り直すことはできた.何と言うペルソナ.大学院時代にWeChatのアカウントを作った時に,WeChatPayの送金機能で同期からもらった1人民元はこうして電子の海の藻屑になった.この顛末でなんとなくWeChatPayに苦手意識を持ってしまい,結局支払いは全部Alipayで完結させた.

ただまあ,送金してくれた彼の名前も思い出せないのだけれど.本当にそういうとこやぞ.

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