#28 かもしれない人生 | 根暗草子
夏が終わっ……たんだっけ？という暖かい日が続いているなあと思っていたら，一気に季節が進んで冬になった．昼間はまだそこまでではないけど，朝晩は流石に寒さが堪える季節だ．寒いのが苦手な自分には厳しいシーズンが続く……のだが，暑いのも苦手なので気候に苛まれるのは平常運転と言える．
最低気温は一桁前半．「地元北海道は最高気温すらマイナスだからだいぶマシじゃん」という相対的な正論はあまり意味を成さない．冬の北海道は人の住むところじゃないからだ．普通に外に出たら鼻毛が凍る世界を可住地と言うのはあまりに乱暴じゃないか．
「北海道に住んでたってことは寒いの苦手じゃないでしょ？」というのも滅茶苦茶な論理と言える．いや，そもそも論ですらない．鼻毛が凍る世界に建てられた家の中で人類が暮らせる理由は何か．それはあまりに断熱がガチであるからだ．ガチガチに断熱材が詰まった壁と，二重の窓に樹脂サッシ．そして全部屋に張り巡らされた暖房．これで鼻毛が凍る地に安住することができる．見ろ，人類の科学の勝利だ．
従って屋内に限って言えば東京のほうが寒い．特に自分が住むような断熱が終わってる感じのボロアパートならなおさらである．こうしてカタカタとタイピングをしている今でも窓際のどこからか漏れてくる寒気に足が冷やされている．
対抗するはエアコンの暖房運転．断熱がしょぼい部屋で暖房を付けるのはコスパが悪くて気が進まないのだがそうも言っていられない事情がある．特に朝晩は染み入ってくる寒さが堪える．布団に入って寝付くまでと，起きる直前からはエアコンで部屋を暖めたいのだが，我が家のエアコンのタイマー機能は「n時間後に運転を止める」「m時間後に運転を始める」のどちらか一方しか設定できない．従って「寝るまで止めない」と「起きたときには動いている」のどちらかを取る必要がある．なお「点けっぱなしにして寝る」は選択肢にない．電気代が高くなるからである．なんというケチクソ野郎．
色々迷って「寝る時に1時間後までエアコンを動かしておく」ほうを取った．寝る時に寒いと寝付けずに困るが，逆に言うと寒いと良くも悪くも目は覚めるからだ．ただし，あまりの寒さに布団から出られずに二度寝をカマして寝坊することはないものとする．
そうしてエアコンをタイマー運転にして布団に入る．温風が顔に当たる．……顔に当たる．そうか，エアコンが布団の真上にあるからか．と考えたところでふと思ってしまう．
これ，寝ている時に大地震か何かでエアコンが落ちてきたらどうなるんだろう，と．
エアコンを自分で担いだことはないので何とも言えないが，おおよそ軽そうには思えない．多分，見た目以上に重いんじゃないかと思う．それが就寝中に落ちてきたら？控えめに言って多分いろいろミンチっぽい感じになるんじゃないか？
エアコンがその位置エネルギーで一思いに殺してくれるなら，それはあまり悪い気はしないけれども．自分のツイてなさから言うと，多分中途半端に生き延びる感じのオチが見える．惰眠を貪っていたらいきなり激痛で目が覚めて，何が起きたのかもあまりよくわからず……な展開だ．
あーあ，暖房付けたせいで寝られなくなっちゃった．心配性もここまで行くと病気だろう．
