Bluelight Sonata

2022-09-26

#16 みんなバラエティやってたなんて | 根暗草子

With overlooking the Biwako Lake, Shiga, Japan.

梅雨が明けても週末は天気がパッとしない夏が過ぎ,気づけば秋雨前線がかかりはじめた頃,滋賀県に行ってきた.理由は,近畿は秋雨前線がかからない予報になっていたから,ただそれだけ.


7年ぶりとなる滋賀県.7年前は大津市と京都の境にほど近い,逢坂関を見に行った.百人一首の「これやこの」の句に詠われる,あの逢坂関だ.当時大学生にしてはなかなか渋い旅行先じゃないか.

今回向かったのも同じく大津市,そして琵琶湖西岸のエリア.散々行きたいと思っていた東岸の長浜を避けて西岸にしたのは,東岸は天気が悪そうだったから.本当に天気でばかりものを考えるクセが抜けない.


まず向かったのは大津市街にあるびわ湖ボートレース場.文字通り琵琶湖に接するボートレース場で,ボートレースを見物しつつ琵琶湖の景色も楽しめる,と前にどこかで読んでから気になっていた.

気になった理由からしてにわかもいいところなので,ボートレースのことは何も知らない.何も知らないが,せっかくボートレース場に来たのだから賭けることにする.出場選手のことも知らなければそもそもルールもわからないが,適当にマークシートを塗って適当な賭け金を投入してみた.

面白いもので,こういう無欲の時に限ってギャンブルは当たる.数百円の儲けを出したところで,こんなことになるなら数千円ぶっ込んでおけばよかった,と思いながら次のレースに更に賭けてみて,案の定負けて所持金を若干減らしてボートレース場を後にした.


続いて向かったのが打見山.志賀駅──そう,滋賀駅ではない──からバスに揺られ,びわ湖バレイロープウェイで登っていく.山に登ると言うと,数百メートルの高度を稼ぐのに脚をボロボロにしてなんとか這い登っていくような登山ばかりしていたが,ロープウェイでスイスイと登っていくのもたまには悪くない.

そう,このロープウェイの「スイスイ」っぷりは過去にない速さだった.実際,日本最速だとかなんとか言っていた.この手のロープウェイはだいたいジワリジワリとじれったいほどゆっくりと登っていくものが多いが,このロープウェイは何というか,「引っ張り上げられている」という力強さを感じる,そんな速さだった.

そんな他にない速さ故にこのロープウェイで起こるのは,支柱を通過するときの前後の揺れ.車内の放送では「まもなく支柱を通過します.揺れますのでご注意ください」なんて注意が流れて,支柱を通過して,前後にロープウェイが揺れて.

そこまでは良かったのだが,揺れた瞬間,車内──満員だったので数十人は乗っていたが──「うおおおおおおおおお!」と盛り上がった.さすがに日本最速のロープウェイともなれば流石に他とは揺れも一味違うな,と──ひとりなので当然──黙って考えていたところで,「まもなく2本目の支柱を通過します」でまた「うおおおおおおおおお!」だ.盛り上がるねえ.


そして3本目,最後の支柱を通過するのだが,3本目の支柱だけは一味違う.何が違うかと言えば,3本目を通過するときは「まもなく支柱を通過します」という放送がないこと.

揺れを伝える放送がないまま3本目の支柱を通過して,体感1本目・2本目と同じように揺れたのだが,ロープウェイ車内は誰一人揺れに対するリアクションをしていない.していないどころか誰も支柱を通過したことに気づいてすらいないかのような反応をしている.


そうして27年目の人生にしてようやく気づいた.みんな揃いも揃ってバラエティのワイプで抜かれたガヤ芸人の如くリアクションをしてるんだな,と.

なんかもう,逆に安心した.2本目の歓声のときなんて,車内の盛り上がりについていけなさすぎて居た堪れない感じにすらなっていたが,みんな内心そんなに盛り上がってなかったんだな,って.

要はそこを「盛り上がったようにする」か否かが彼らと自分の違いになっているに過ぎない.過ぎないのだが,自分はどうやってもあんなにリアクション取れないので,その違いはやっぱりあまりにも大きいかな.

Category: 根暗草子