#08 仮面の世界 | 根暗草子
ここ最近,著名人が過去の言動を「掘られ」て表舞台から追放される件が相次いでいる.「キャンセルカルチャー」と呼ばれ,その危うさを主張される言説も増えてきた.一方で,どれだけアンチキャンセルな主張がされたところで,しばらくはキャンセルカルチャーは続いていくように思える.
最近のキャンセルされた面々を見て考える,キャンセルカルチャー時代の局所的最適行動は,結局「意見発信は匿名でする」な気がしている.少なくとも,リアルの人格で何かを発信することのリスクが高すぎる.匿名でないにせよ,ギリギリ許せるラインはハンドルネームだけが表に出ている状態.古のハンネの時代に戻るべきときが来た.
一昔前であれば,ハンネの仮面でできる表現はテキストベース,ギリギリ音声くらいが限度だったけれど,VTuberの勃興に見られるように,(リアルのそれではないけれど)映像を用いた表現すら,ハンネの仮面の範疇でできる昨今.こうなった今,リアル人格をぶら下げて何かを表現する必要やメリットは,キャンセルされるリスクに見合っているのかどうか.
ハンネの仮面であるならば,キャンセルされても不死鳥のように蘇ることができる.名前を捨て,声を変え,外見も変えて,文字通り別の人生を歩めるのがハンドルネームのすごいところ.
むしろ,今の時代リアル人格を特定できる形で意見表明するほうがどうかしているのでは?
リアリストを気取る気もないけれど,「キャンセルカルチャーは言論として危険なのでやめましょう」とか主張している人を見ていると,ああ徒労だなと思ってしまう.「こうあるべきだからこうしましょう」が通用しないのがインターネットなので,統制の効かないネット群衆に「べき論」を説いて何になるんだろう,と思ってしまう.
著名人が晒されるようになったから広く問題視されるようになっただけで,もっと前からそれこそ夏休みにバカな中高生のブログが晒されるなんて事件はいくらでもあったわけで,そしてそれは今日まで止まったことなどないのだから.