2番目の記憶
最近の国内旅行連打の成果もあり,未踏の都道府県が秋田・愛媛・高知・熊本・宮崎・鹿児島だけになった.ここまでくると,残りの県に関してはこう言ってはなんだが「行きたいところが特にないので未踏のまま残っている」という向きが──鹿児島だけは砂蒸し温泉に行ってみたいとは思っているが──強い.
一方で,複数回訪れている県,それどころか街がちらほらと出始めている.未踏の県を優先しようとする思いはありつつ,新しい旅行先の計画を練る元気もなくて,イージーな選択肢として再訪を選びがち.
最初は「同じところに何度も行くのはちょっとなあ」と思いながらという節もあったけど,何度かやってみるとこれがなかなか心地良い.
まず,初回の訪問で有名所のスポットや,特にここは外せない,という見どころは抑えているので,○○に行かなきゃ!みたいな強迫観念がない.
初回の訪問は,短い時間の中でここは行きたい,あそこも外せない,とてんこもりにして,仕事でもしないくらいの分単位の見通しを立ててキモオタ特有の早歩きで街を走り抜けることになるので,基本忙しない.今思うと,初回の尾道訪問なんて1時間半で千光寺まで往復して帰ってきたのはどうかしてると言わざるを得ない.
2回目の訪問ともなると「さて,じゃあどこ行けばいいですかね」くらいの──何しに来たんだよというのは尤もなのだが──ノリになるので,余裕の持ち方が違う.
尾道駅から儀式のように千光寺に向かう人達を横目に見つつ,コーヒーを買って埠頭でボケーっとしたり,向島に渡って小高い神社から対岸を眺めてボケーっとしたり,ホテルに早めに入ってうたた寝して,商店街のパン屋でパンを買ってみたり,と,これ旅行だっけ?ってくらいの緩さは,今までにはないスタイルだけど,非常に心地よい.
こういうスタイルは,無駄を擦り落とした再放送的な東京での生活よりよほど”暮らし”感があるのも良い.柄にもなく,こういう暮らしができるなら移住っていうのもちょっと憧れるな,と商店街のパン屋で買ったベーグルを齧りながら思ったりする.
海外旅行もしにくい今,生き急ぐように未踏の都道府県を減らしてしまい,この先,国内旅行でどこに行くか困る日が来るのかな,なんて一抹の不安を覚えたこともあるけれど,どうやらこの新しい楽しみ方でまだまだ無限に国内で楽しめそうな気がしている.