石焼き芋
最近,荻窪駅の駅前で石焼き芋屋が焼き芋を売っているのを見かける.12月に入ってくらいから見かけるようになって,不定期に昼過ぎから夜にかけてやってくるらしい.去年は見かけたことがないので,多分今年からやってくるようになったんじゃないかと思う.
ついに27年目に入った人生で焼き芋の移動販売を見たのは実は数回しかなくて,買ったのは1回しかない気がする.あれは忘れもしない,10年以上前に神奈川県某所の住宅街で遭遇した移動販売で買ったのだ.遠くから「石焼き芋~」という拡声器の声を聞くことはあっても,実際に遭遇した回数は実はとても少ない.
北海道では,というと多分主語が大きすぎるのだが,少なくとも地元では見たことがない.あまりに雪深すぎて移動販売が困難だからなのか,人口が少なくて損益分岐点に達することができないという判断なのか.あるいは,芋を庭で適当に蒸し焼いて食う文化習慣がある地域で焼き芋屋としてサバイバルするのは難しいのか.実家にいた頃は適当に落ち葉や枯れ枝なんかで芋を焼いて食っていた.何故か芋はじゃがいもだった.そんな地域でわざわざ移動販売で芋を買って食おうとはなかなかならないだろう.
考えてみると焼き芋屋をやっている人って,どういう人達なんだろうか.焼き芋といえば冬だけど,その他の季節に何をしているんだろうか,とか,意外と考えたことがない.「冬だけ別の仕事をする」といえば北国の農家を想像するけど,わざわざ上京して焼き芋屋をやるとも思えないし.飛んで拡声器に入る冬の虫たちに焼き芋を売っているおじさん達の人生は,なかなかに想像するのが難しい.
石焼き芋屋のよくないところは,だいたい買いたいときに限って居なくて,買えないときに限ってそこに居る.結果,12月に幾度となく見かけたにも関わらず未だに焼き芋を買えていない.今日も「焼き芋屋いたら買うか」と思い散歩がてら駅まで行ったけど,案の定そこに焼き芋屋の姿はなかった.
そのまま帰りがけに見かけたローソン100の店頭でも焼き芋は売っていたけど,そうじゃないんだよな,欲しいのは.正体のよくわからない石焼き芋屋から焼き芋を買いたいのであって,焼き芋ならなんでもいいわけではない.―――なんて言っているせいでついに石焼き芋は買えないままに2020年も終わろうとしている.来年に期待,ということで.