桜味蕾
2月,唐突に河津桜が見頃を迎えたニュースが舞い込んで,桜前線がやってくる.感覚的にはまだ真冬の頃で,北海道なら冬の間降り積もった雪がそこかしこに積み上げられて,そろそろ雪の置き場所に困るんじゃないかと不安になり始める,そんな真冬に既に桜の季節はやってきていることに違和感を隠しきれない.
そしてそれと歩調を合わせるように,各種「桜フェアメニュー」が街中に溢れはじめる.やっぱりちょっと気が早くないか?本番はソメイヨシノじゃないか?と思うが,河津桜が咲く頃に各社談合でもしているのかってくらい同じ時期に桜関係のメニューが溢れかえる.ゴールデンのテレビ番組は18時58分に始まるし,雑誌の3月号は2月に出る.桜商戦も,同じように少しだけ気が早い.
しかしこの手の「桜風味なんとか」とか「桜味なんとか」みたいなものは,よく考えると意味がよくわからない.季節のものだしと思って「桜風味」だの「桜味」だの謳う「さくらなんとかティー」を飲んだりするわけだけど,よく考えると「桜の香り」は言うほど印象に残っていない.「桜味」に至っては桜を食べたことなどないので味がわからない.
情報を食っていると言われればそれまでだが,もはや資本主義的に氾濫する「桜風味」こそ「桜の香り」であり「桜の味」なのだと,逆に刷り込まれている気さえしてくる.俺達は騙されているんじゃないか?
そんなひねくれはさておき,2月の河津桜から1ヶ月強の沈黙を経て再びやってくるソメイヨシノの桜前線はあまりにも神出鬼没で,いつ咲き,そしていつ散るのか全く読めない.いつか桜満開の頃に写真を撮りに行きたいと思っているスポットはいくつもあるのに,何年経っても実現しないのはそれが理由だ.
今年の桜は特にひどかった.「今年は開花が早いでしょう」と言っていたのに,明らかに開花も見頃も遅くて,珍しく4月まで満開の桜にお目にかかることはできなかった.当然,そんな気まぐれな咲きっぷりに翻弄され,今年も桜を見に遠出することはできずに,またしても中野通りに吸い寄せられるようにして桜を見に行っている.
今年の桜はあまりに遅すぎて,「さくらフェア」をやっていたはずの喫茶店はソメイヨシノが咲いた頃には「沖縄黒糖フェア」をやっていた.えっと……桜は……?今まさに見頃なんだけど.
あと,更に遅れて重役出勤する八重桜のことも忘れないであげてほしい.八重桜が見頃の頃,下手したら夏っぽいキャンペーンやってるでしょ.ほんとに気が早い,この世の中.