Bluelight Sonata

2025-03-30

相対的に若くなる

つぶやき / camera α7CR / lens SEL70200GM2 / location Kanagawa
Nikaryo Aqueduct, Kawasaki, Kanagawa.

帯状疱疹になった.思えば「帯状疱疹だ」と気づく少し前から違和感があった.季節の変わり目だったから肌が乾燥したとか,そういうことだろうと思っていた.適当にニベアか何かを刷り込んで終わりにしたのだが,違和感は終わらなかった.何かだんだん痛みも出てきた気がする.で,蓋を開けたら帯状疱疹だった.

汚い話で申し訳ないのだが,発症したのがケツから脚の付け根にかけてだった.当然,日常生活で自分のケツと脚の付け根にお目にかかることはあまりない.なので違和感に気づくのが少し遅れた.「何かケツ痛えな」と思いながら有休を取った月曜日を満喫して,帰ってきてシャワーを浴びたら明らかに「何か」が出来ていた.

風呂から上がって,さてどうやって自分のケツを拝もうかと逡巡して,スタンドに載せたスマホをインカメにして,パンツをずり下ろした自分のケツに向ける異常独身男性(30)が東京都杉並区荻窪に爆誕した.今この瞬間,荻窪で一番みっともないことをやっている自信がある.そしてそのみっともない姿の異常独身男性のケツには,帯状疱疹が出来ていた.スマホのインカメに写っていた.


言ってしまうと,帯状疱疹なんてジジイババアの病気だと思っていた.ググったら「20代の若者でも発症することがあります」って書いてあったけどさ.「あります」っていうのと「自分がなります」の間には大きな溝がある.名前も知らない運のないヤツが発症するんだろうと,そう思うのが普通だ.問題は,その運のないヤツが自分だったということだ.

だいたい原因は分かっていて,ここ1ヶ月ほど仕事がちょっとキツかった.いやでも「キツかった」って言ってもな.1年半前は月に当たり前に60時間弱は残業して,月に1,2回は夜勤もしていた.それでも涼しい顔をしていた自分が,たかが45時間の残業を1ヶ月やっただけで,ケツに帯状疱疹を抱える羽目になっている.これが老化である.日常化したリトルな無茶をやったら免疫が落ちて帯状疱疹が暴れ出すようになっている.今後こんな免疫の落ち方を当たり前にするようになるとするなら,ちょっと忙しくなったら常に風邪をひくようになるだろう.恐ろしいとしか言いようがない.「30代になると風邪ひきやすくなるよ」と言われたことはあるけど.30歳になった瞬間こんな免疫力落ちることあるか?

あるいは,労働時間の問題ではないのかもしれない.時間以上に,外形的にはちょっとストレスがかかる感じの仕事ではあった.ただし,「外形的には」と言っているのは,そもそも自分は仕事にそんな責任感を持って取り組んでいるわけではないので,ストレスなど掛かっていないという認識であった.プロジェクトとしては問題かもしれない,ただそれは別に「自分」の問題ではない.ただのサラリーマンだしね.そんな無気力な向き合い方をしていたにも関わらず,ケツに帯状疱疹が出来るのだから,人間が内心どう感じているかなんて,自分でもよく分からない.

まあ,そういうわけで十中八九仕事のせいなのだが.ボスに「帯状疱疹出たので,リモートで仕事しますが出社はできないです」と言ったら,「流行ってるらしいですね」とかいうよく分からない答えが返ってきた.原因の一部,この感じじゃないの?


翌日には皮膚科に行って,抗生物質と軟膏をもらった.私は抗生物質が好きである.何と言うか「化学のチカラ」って感じがするのが良い.しかし,ここ最近風邪ひいたりすることも無かったし,抗生剤を処方してもらうのは子供の時以来だ.抗生物質のパワーはやっぱりすごくて,3日目くらいには疱疹は消えてかさぶたに変わっていった.化学のチカラってすげー.

難儀したのは軟膏である.「自分のケツに軟膏を塗る」,ここまでは良い.だが,病院での指示は「塗ったらガーゼを貼ってください」である.今回の件を経て1つ学び,賢くなったことがあるのだとしたら,それは「自分のケツにガーゼ貼るのはメチャクチャ難しい」という事実である.病院でも言われた.自分で貼るの難しいと思うので,って.「ご家族います?」「いないです」「あっ」というやり取りがあった.

「あっ」じゃねえよ.


軟膏を塗り続けた1週間,ぐちゃぐちゃになるガーゼで余計にストレスが溜まったが,再び皮膚科に行って,「おー!完全にかさぶたになってる!やっぱり若いと治り速いね~」と,かさぶたのケツを半分さらけ出した状態で関心される異常独身男性(30)になった.50代以上の発症が多い病気なので,30代は「若い」のである.若さとは常に相対的で,2年前と相対的に老いて免疫が落ちた自分は,世間一般で帯状疱疹をやらかすおっさんよりはまだ若い.

なお,「高齢の方に出ることが多い」とされる,帯状疱疹が治った後の後遺症的な症状が若干まだ残っていることを申し添えます.相対的に若いっていうのも疑わしくなってきやがった.

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