Bluelight Sonata

2025-02-16

脳内メモリリークが止まる

つぶやき / camera α7CR / lens Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA/SEL55F18Z / lens SEL85F18 / location Nagasaki
Nagasaki Night Walk

「経県値」というWEBアプリで過去の国内旅行の記録を取っている.住んだことがある県は5点.宿泊したら4点.観光したら3点.こういうロギングアプリみたいなものは大好きなので大いにハマった.学生時代の旅行経験を入れたら結構点数が高かった.1点以上の都道府県には地図上に色が塗られるのだが,「これ,全都道府県塗るのも不可能じゃないな」と思った.思ってしまった.

思ってしまったが運の尽き.以来,常に「その旅行では塗れるのか?」が付き纏う羽目になった.なるほど大阪に行きたいって?いやいや大阪はもう4点入ってるから意味ないから.行くなら和歌山行くんだよ,和歌山.万事こんな感じである.

だいたい,そこそこ国内旅行していたもなお「塗れていない」ということはつまり,それまで行きたいと思わなかった県というわけで.それでも「塗るために行くんだ」という強迫観念に押しつぶされて日本中を旅した.ただ,別にそれは悪いことではなかった.「塗る」動機でもなかったら来なかった県でも,毎度何かしらをそれなりに楽しめた.良い機会だったと思う.


3年前はとにかく「塗る」ことが全てだった.効率的に「塗る」.それが旅の計画の土台にある.その結果,やけに複数県を跨ぐ旅行が増えた.愛媛に行って松山に泊まる.愛媛4点.そのまま愛媛から帰るか?いやそれは勿体ない.高速バスに乗って高知に移動してひろめ市場を観光して鰹のたたきを食す.高知3点.ほら見ろ,1回の旅行で7点も稼いでやったぞ.

このムーブで3点稼いだ県は,和歌山,鳥取,高知,宮崎,そして長崎.東京からのアクセスが悪く「塗りにくい」都道府県を,姑息な手段で塗りつぶした.そうして,2022年中に全都道府県を「塗る」ことに成功する.


姑息な手段を使った報いは,すぐに降り掛かってきた.塗り終わった地図見て思ったんだよね.「これ全都道府県宿泊も夢じゃないな」って.そう思った.思ってしまった.

そう思ってしまったらどうなるか.想像に難くない.全県「宿泊」で塗る旅が始まった.

三朝温泉に泊まって鳥取を塗り,高知に行って,高知空港を1年で3回使う羽目になった.宮崎ではシェラトン・グランデ・オーシャンリゾートに泊まった.1人で.リゾートホテルに.悪くなかった.「ちょっと良いホテルに泊まる」金のかかる趣味が発生したのも,そういえばこの宮崎旅行のせいだ.

そして長崎.最後に残ったのは長崎だった.


長崎は夜景もまだ見ることができていなかったし,行きたい気持ちはあった.ただ,長崎って高いんだよね.飛行機が.新幹線とか競合がないので足元を見た料金を吹っかけてくる.折しも人手不足やら燃料高騰やらで何もかもの物価が上がっていく時代.長崎1泊2日行く費用に少し足せば海外行けちゃう……という事実が,長崎を最後まで残らせた原因.

この状態は結構しんどかった.有休を取って連休がある.じゃ,長崎行くか?と思って調べたらホテルがあまりに高すぎる.天気も悪いから夜景も綺麗に見えないだろう.これじゃ割に合わない.じゃあ,どこか他に旅行に行くか.でも「長崎まだ塗れてないんだよな」って.常にそれが付きまとって,そのせいで結局長崎以外に行くこともせず,連休を東京でYoutube見て過ごして無駄にしたりとか.

「まだ長崎塗れてないんだよな」これが常に脳内にあって,常に脳の計算資源を少し奪って,そして脳のメモリを無駄に確保する.これが丸2年弱続いた.



そしてついに重い腰を上げて長崎宿泊の旅に踏み出した,その最後の決め手は何だったのか?それはよく分からない.結局飛行機もそれなりに高かったし,ホテルもそれなりに高かったし.天気も悪かった.正確に言うと,天気予報を見て天気が崩れなさそうな日を選んで直前に予約したのだが,当日蓋を開けたら雨が降っていた.もう行くこともないかもしれないから夜景を見に行ったら,夜景は低く垂れ込んだ雨雲のモヤの中にあった.それはそれで綺麗ではあるのだが,もう少し良いコンディションで見たかったというのが正直なところだ.どうせこうなるなら,もっと早く長崎に行っていれば良かったのだけれど.

2年半ぶりの長崎.自分の好きな街の特徴を2つ満たす街.坂のある街で,路面電車が走る街.夜景も悪くなかったけど,諏訪神社の参道を登って振り返った長崎の街並みが一番良かった.振り返ると参道が続き,鳥居の影が落ちて,山肌に張り付くように家が立ち並ぶ光景.これを見てようやく,脳内メモリリークが止まった.

こうして全県宿泊で色を塗る挑戦は終わった.終わってしまったのだが,さてこの先自分は何を基準に国内を旅すればいいんだろう.それがよくわからなくて,結局新しい悩みのタネを生んでしまっただけなのかもしれない.

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