Bluelight Sonata

2024-03-02

05. 胃に差す光 | Letter from Havana

Farmacia, La Habana, Cuba.

キューバ3日目の朝.4日目は昼過ぎの便でキューバを発つので,実質的には今日が観光最終日になる.朝8時にホテルで朝食を食べる.前日は朝7時に朝食にしてもらったのだが,どういうわけか朝7時のキューバはまだ暗かった.その反省を活かしての朝8時である.トースト,スクランブルエッグ,フルーツ,グアバジュース.そして締めにキューバコーヒー.

部屋に戻ったところで唐突な腹痛.トイレに駆け込む.まあ,ここまでは日本でもよくある――腹が弱すぎていつも腹を下している――のでどうってことはない.そこまでは良かった.用を足して歯を磨く.……ところで異常に胃がムカつくことに気づく.胃がムカつくところでの歯磨き,即えずく.まあ,これも日本でもよくある.だいたいコーヒーを飲みすぎて胃もたれを起こしているからだ.こいつ胃腸の健康管理ボロボロすぎるだろ.


用も足したし,歯も磨いた.えずきはしたが.んじゃ出かけるか,ってところでまだ胃がムカついていることに気づく.これはおかしい.だいたい一度歯磨きでオエーッとしておけば胃もたれは回復するのが日本での日常である.洗面所に駆け込んでゲーゲーやるものの乾嘔が出るだけで一向に回復しない.

そんな時のために!出発前に胃薬を買い込んできたのである.しかもプレミアムとか書かれているちょっと良いほうの胃薬である.これがあれば胃もたれは一発で治る.ということでポーチを開けてみたら痛み止めしか入っていなかった.買った胃薬を持ってくるのを忘れている.こいつホント馬鹿なんじゃないのか.

胃薬あれば胃もたれなんて一発だもんね~胃もたれのバーカ!ガハハ!と高らかに勝利宣言していたところで,胃薬がないことに気づいた.その落差でまたちょっとえずく.胃腸も弱けりゃメンタルまで弱いらしい.

ここが他の国なら.薬局に薬でも調達しにいくか,というところだが,ここは物資不足極まっているキューバである.ちょうどホテルのすぐ横に"farmacia",つまり薬局があったのだが,中は夜逃げした後かってくらい何もない.胃薬ロスでメンタルがやられているので「そもそもこれ胃もたれなのか?何かヤバいもの食べて当たったとかじゃないのか?」と,どんどん弱気になりつつベッドで横になっていた.


しばらく横になっていると多少胃のムカつきもマシになってきた気がした.ムクリと起き上がって考える.日本から遥々フライトだけで15時間かけてここまで来て,観光できるのは今日が最終日.このままホテルでひっくり返っていて本当にいいのか?いや,良くない.キチンと反語をキメて決意を固めて外に繰り出してみる.最悪いよいよ胃がムカついたらその辺で吐けばいいだろう.


Casablanca, La Habana, Cuba.

結論から言うと,大丈夫だった.外に出た瞬間,思い描いていた以上の穏やかな日差しが胃に差し込んで,胃のムカつきはどこかに消えた.晴れれば胃もたれは治るらしい.我ながら単純な身体の仕組みになっているとは思う.

逆に言うと,旅先を曇らせがち,かつ胃腸が弱い自分は間違いなく胃薬を持ち歩くべきだろう.本当,なんで忘れたんだろう.今度からパスポートカバーに胃薬でも仕込んでおくことにしよう.

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