2021-06-14
#03 長く昏い春の終わり | Just before the dawn
2月,北風一辺倒だった風向きが変わって,たまに南風が吹くようになる.南風が吹くと,羽田空港の運用が変わる.目を凝らせば杉並区からでも都心上空を飛んでいく飛行機が見える季節になる.
そしてそんな春の足音が聞こえてくる頃に体調を崩しやすくなる.「季節の変わり目は風邪をひきやすい」のではなく,そこから春が終わるまではだいたい具合が悪いことこの上ない.
5月,星を撮りに行った.丑三つ時にホテルから抜け出して,真っ暗闇の中でカメラを構えていた.その後もずっと海辺にいた.日の出が見たかったからだ.
実は今まで水平線からの日の出を見たことがなくて──そもそも太平洋を間近に拝んだこともなくて──,今回が人生初の日の出鑑賞と相成った.
この日の日の出時刻は4時35分.星を撮るために調べて,もうこんなに日の出が早くなっているのかと驚いた.でもそれ以上に驚かされたのは,薄明の時間.3時過ぎ,日の出の1時間半も前から薄っすらと空が白んでいった.
月並みながら──この場合は日並みというべきか──,太陽ってすげー,と思った.まだ水平線の向こうの地球の影にありながら,それでも空が白むとは.
2月に6時のまだ空が暗い東京を散歩したのが懐かしい.今となっては3時に空が白んで,やっと春が終わったんだなあ,と思った.
Category: Just before the dawn