Bluelight Sonata

2026-03-14

ラグーザからの帰り道 | Interlude

Interlude / camera α7CR / lens SEL24105G / location Italia
Lagusa Ibra, Sicilia, Italia.

週末にマルタでノンビリした後にシチリアに発ってからの数日はなんとなく忙しなかった.月曜日にマルタからカターニアへ飛んでシラクーザへ.火曜日はシラクーザからノートへデイ・トリップ.水曜日はシラクーザからカターニアに一度戻ってからラグーザへ,そして今日木曜日はラグーザからモディカへデイ・トリップ.

ノートとモディカのデイ・トリップも,結局現地の散策時間はあまり長くはなくて,ここ4日は常に飛行機かバスで移動しているような,そんな4日間だった.公共交通機関での移動メインの日,ということは,自分の脚で歩いた距離はそんなに長くない日とも言える.だから移動メインの日はあまり疲れが溜まらないのか?と思いきや,意外とずっと座ってバスに揺られるというのも疲れるようで,座っているだけなのにホテルに戻ってきたときにはグッタリしている.

そして移動が続くということは,翌日も移動するというわけで.倒れ込むようにして眠り,そしてもう旅に出て一週間は経っているのに薄っすら残っている時差ボケの残滓で明け方に少し目が覚めてしまい,そしてそのせいで薄っすらと眠気を抱えて朝を迎える.まだ眠いけれど,自宅とは違うホテルのパリッとしたシーツに包まれてまだ寝ていたいけれど,それでも起きねばならぬ.何故なら9時半のバスに乗らなければならないから.そしてバスではうたた寝しつつ,でもスリに気をつけないといけないので頑張って起きていて.


モディカから帰ってきたら,本当に疲れはマックスだった.まだ夕方だけど,今ならすぐにでも眠れる.そう思ったけど,せっかくここまで来て夕方から寝てしまうのは勿体ない,と椅子に座って休憩していたら,その後の記憶が少し無い.どうやら椅子に座ったまま寝ていたらしい.気づいたら外は暗くなっていた.

しかし案ずるなかれ,ラグーザは夜景が美しい.5月24日通り――海外の日付が通り名になってるのって良いよね.日本でもやって欲しいんだけど――の先の,“階段の聖メアリー教会”の脇から見るラグーザ・イブラの夜景は,暗闇に浮かぶ島のようでとても美しい.このイブラの写真をどこかで見たのが,シチリアに行きたいと最初に思ったきっかけでもある.あの写真との出会いがなければ,今回のこの旅行の,この旅程は存在しなかっただろう.

だからだろうか.ラグーザ・イブラの夜景を見た時,初めてこの旅の“終わり”を意識した.明日からバスと,飛行機とそれから鉄道で,少しずつ北へ,北へ,北へ.ここまで北へ南へ東へ西へと行ったり来たりしてきたけれど,ここから先はひたすらイタリアを縦断して北へ.ここから先は帰り道なんだな,と.

そう思ったら,とてつもなく悲しくなってきて,ラグーザ・イブラを見ながらしばらくそこに座っていた.



さて,このラグーザは,この旅で訪れた街の中で一番「辺境に来たな」と感じる街だった.地理的隔絶っぷりからするとモディカのほうが辺境のはずなのだが,モディカでは見かけた観光客は,ここラグーザではあまり見かけなかったように思う.新市街のスペリオーレ側に宿泊したからかもしれないけれど.こんなにも綺麗な夜景を拝めるのだからもう少し観光客がいても良いと思うのだが.

イタリアに来てからは朝食はホテルの朝食かもしくはベーカリーのコルネット――Duolingoで勉強したのでコルネットだけはイタリア語で注文できるのだ――,昼食はスーパーで買ったサラダボウルと惣菜,そして夕食はピッツェリアでテイクアウトしたマルゲリータピザと言うのがルーティーンとなっていた.

さあラグーザでもマルゲリータと洒落込みますか,とGoogleMapで調べたピッツェリアに行ったら,そこにあるはずのピッツェリアはなかった.正確に言うと,あったのだが店が閉まっていた.営業時間も調べたのに何故だ.

だが悲しむことは無い.こういうこともあると思っていたのでプランBとしてもう1つ候補のピザ屋を選定していたのである!我ながら抜かりのプランニング,さすがじゃん,とプランBピザ屋に着いたら思った以上にちゃんとしたピザレストランみたいな感じで,テイクアウトよろしく,なんて言える雰囲気では無かったのでそのピザ屋は断念した.

そうしてピザ屋の手持ちカードを失ったわけだが,これだけ国外を放浪しているとどうしようもないノウハウだけは溜まっており,本当の最終カードを持ち合わせていた.それは「ケバブ屋」である.ケバブ屋はだいたいどこの国にもある.そして安くて美味い.肉も野菜も摂取できる.良いことばかりである.

実はこの旅の3日目,フランスはコルマールでも早々にケバブ屋のカードを切っていたのだが,ついに禁じられた2回目のケバブカードを切る時が来た.

シチリアの陸の孤島,ラグーザで食べたケバブは美味かった.



翌日はもう,最初からケバブ屋に行こうと思った.というより行った.行ったのだがケバブにはありつけなかった.ケバブ屋は休みだった.ついに「国外で夕食難民になったときの最後の切り札」を切って負けた.

ケバブ屋からのホテルへの帰り道,多分どこかで何かを買って食べたと思うのだが,ケバブ屋ショックのせいか全く記憶が無い.記憶が無いどころかスマホを探したが写真すらなかった.ケバブ屋に行って休みだったということすら本当なのか,全部夢の中の話だったんじゃないかと言われたら,はっきり反論できるほどの記憶も論拠もない,そんなラグーザの帰り道.