Bluelight Sonata

2024-05-31

Daily | My Favorite Things

Everyday life is in the stall.

海外旅行は好きか,と聞かれると無論好きであるという答えになる.ただしそれはマクロの話であって,ミクロで言うと「海外なんて来なけりゃよかった」と思っている瞬間がないわけではない.そしてそれは,特に何か嫌な思いをしたからそう感じるわけでもない.

シンプルに,そして唐突に,とんでもない不安に襲われるのだ.飛行機に12時間も缶詰になってようやくたどり着いた異国の地にいて,帰る時はまた半日飛行機に乗って帰るんだ,と思うと日本から遠く隔絶された気持ちになる.そんなところに頼るアテもなく1人でいる,という事実にとても不安になる.

いや,ちょっとカッコつけたな.「不安になる」どころの騒ぎじゃない.こう,心臓がキュッとなる感じがする.あまりよろしくない精神状態.海外旅行するようになって感じた「一人旅の限界」みたいなもののうちの一つだ.きっと誰かと一緒に旅行していたのなら,こうはならないんだろうな,って思う.

それで,なんで旅に出ようなんて思っちゃったんだろう,とすら思う.



この不安症が最初に出た時は,そもそも自分がそんなことで不安になっているなんて思わなくて,何か変なものでも食べたんじゃないか,ってホテルで休んでみたりもした.でも,むしろホテルに閉じこもっているほうが,より不安は増してくるので,勢いで外に出るのが大事だ,と3ヶ月連続で海外を旅して,ようやく学んだ.

よほど未開の地を旅しているのでもなければ,外に行けば普通に人がいる.人がいるということは,その人達は普通にそこに暮らしている.緯度と経度と住んでいる人たちと,後は言葉が違うだけだって思えば,チョロいもので不安は知らないうちに消えていく.

その点で,ちょっといい感じのリゾートホテルでは――そもそもそんなところに泊まる金銭的余裕はないのだが――ダメだ.日常を感じられる街中が良い.ホテルを出たらすぐ日常が広がっている,という立地が良いのだ.壁が薄くても良い.何なら薄いほうが良い.ホテルにいてもなお,その土地の日常を感じられるからだ.「外の賑やかな音が聞こえてきたので静寂性に欠けます」とかいうレビューが書かれているホテルこそ良いのだ.


そこら辺にあるものは全てがその土地の日常だから,何があっても良いのだが,やはり私は屋台が好きだ.路上で食べ物を売っていて,そしてそれを買う人がいる.その事実に,人がそこに暮らしているという実感が湧くのが良い.

屋台でこんなに買う人いるのか?ってくらいのパンを積み上げた屋台と,そろそろオフシーズンじゃないの?って感じの焼き栗を焼く屋台と,シンプルにトウモロコシを焼く屋台がある.これがイスタンブールで感じた日常だった.



そうして旅先の地にようやく慣れて,不安も感じなくなり,その土地に溶け込んでいく.最初は不安感を煽っていた大音量のアザーンさえも日常に感じられる.でも悲しいもので,それほどまでに馴染んだ頃にちょうど旅の期間は終わる.日本人の休み,短すぎ問題.半月以上とか休めるらしいバカンスが羨ましいことこの上ない.

こうして序盤に感じた不安は綺麗に忘れ去った状態で日本に帰る.だからまたすぐ別の国に旅行に行きたくなるんだろうね.そしてまた,不安に駆られては外に出て,日常を感じて落ち着く,その繰り返しで旅を続けるんだと思う.

Category: My Favorite Things