Bluelight Sonata

2026-05-10

borderless.

Home, sweet home / camera α7CR / lens SEL70200GM2 / location Hokkaido
Maruka Highland, Hokkaido.

約半年振りに実家に帰ってきた.ゴールデンウィークに帰省するのは4年振り.正直記憶は無いのだが,SNSのポストや写真を見る限り4年振りということになるらしい.上京して14年目,そろそろ「いつどの時期に実家に帰ったか」を思い出せないくらいになってきた.記憶というものは面白いほどあっという間に薄れゆくから,写真なり文章なりで記録を残しておくことの意味・意義もあるものだな,と思う.

北海道の5月,北海道のゴールデンウィークとはどういう季節か.本州に住んでいると概ね信じ難いことだが,北海道のゴールデンウィークは桜の季節だ.3月の末に一斉に動き出した桜前線は4月にもひっそりと北上を続けていて,本州の民が桜の存在を忘れ夏を意識した頃にようやくここ北海道でゴールを迎える.今年の桜前線は早かった.北海道も例外でなく,いつもよりは早く桜が咲いたようだ.それでも新千歳空港から乗り込んだ電車からの車窓には,ちらほら桜があった.

これが北海道のゴールデンウィークだ.だから,漫画やアニメで描かれる桜舞う卒業式とか入学式というものに,イマイチしっくり来ていない自分がいる.卒業式で舞っているのは粉雪だし,入学式と言って思い出すのは融けかけでグチャグチャの雪なのだ.


実家での沈没というやつは,ぐーたらな毎日ではあるものの意外にも規則正しい.ノートパソコンを持っていないのでグダグダネットサーフィンをすることもなく,夜はさっさと寝る両親に釣られて早く寝て,昼まで寝ようと思えば片付かないから起きろと言われ朝にはしっかりと起き,朝食を摂る.実に健康的な生活.

我が実家は何の変哲もない田舎である.観光地は無い.故にやることもない.車で1時間も行けば観光地もあるのだが,遠い.わざわざ連れて行ってもらうのもな,ということで最近はあまり遠出はしていない.その代わり,近場にある見晴らしの良い展望台に連れて行ってもらうことが増えている.

こうして展望台から地元を見て思うのは,ここでの人間の暮らしと自然の間に,あまりにも境界が無いということだ.ちょっとした集落の裏には地平線が見えるんじゃないかってくらいのだだっ広い平原が広がっていて,あるいは人が踏み込んだことなんて無いんじゃないかと思わせるような,残雪を被った山地と未開の地が広がっている.

「未開の地」ってそんな大げさな,言っても道路とか整備されているわけじゃない,と言われればそれはそう.そうなのだが,そこを闊歩しているのは場合によっちゃ人間より野生生物のほうが多いという世界でもある.ちょうど季節は5月.実家で片付かないからと言われ目を覚ました私と同様に,冬眠から目を覚ましたヒグマが外をうろつき始める季節でもある.

ヒグマっていう生き物は「進撃の巨人」で言うところの巨人に近い.生身の状態で遭遇したら終わりくらいの感覚である.「進撃の巨人」と違うところがあるとすれば,ここ現実世界サイドには「壁」が無いということか.

集落のすぐ近くには未開の地が広がっていて,未開の地にはヒグマが住んでいる.必然,ヒグマが集落に出没することになる.


ちょっと前に「ホグワーツレガシー」というゲームをやった時に,ホグワーツのすぐ外に柵も何もなく「禁じられた森」があり,そして集落のすぐ外には凶悪な魔法生物がウヨウヨしている舞台設定で,どれだけハードモードな世界観なんだ,と思ったが,なんてことはない,地元も同じようなものである.

それでもこの文明と自然の境界線が曖昧な地で15年を過ごした.その辺をヒグマがうろついている世界を自転車で普通に登校していたのはなかなかの感性だったと思うが.そして今もここで暮らしている人たちがいる.そもそもこの展望台の存在は住んでいた頃には知らなかったのだが,今こうしてかつて住んだ土地のあまりのボーダーレスっぷりを,こうして俯瞰するのは不思議な楽しさがある.